◆安全管理指針
  1. 趣旨
    この基準は、佐々木病院における医療事故の発生防止対策および医療事故発生時の対応方法について病院が取り組む際の指針を示すことにより、医療安全管理体制の確立を促進し、適切かつ安全な医療の提供に資することを目的とする。
     
  2. 基本理念
    医療の場では、職員の不注意が、単独あるいは重複して発生したことによって医療上望ましくない事態を引き起こし、患者の安全を損なう結果となりかねない。患者の安全を確保するためには、まず我々職員の普段の努力が求められる。
    さらに、日常診断の過程にいくつかのチェックポイントを設けるなど、単独の過ちが医療事故というかたちで患者に実害を及ぼすことの無いような仕組みを院内に構築することも重要である。
    本基準はこのような考え方のもとに、それぞれの職員個人レベルでの事故防止対策と、医療施設全体の組織的な事故防止対策の二つの対策を推進することによって、医療事故をなくし、患者が安心して安全な医療を受けられる環境を整えることを目標とする。
    本院においては、病院長のリーダーシップのもと、全職員がそれぞれの立場からこの問題に取り組み、患者の安全を確保しつつ必要な医療を提供していくものとし、全職員の積極的な取り組みを要請する。
     
  3. 用語の定義
    本基準で使用する主な用語の定義は、以下のとおりとする。
    (1)ヒヤリハット・・・・・ 人的または物的に被害を及ぼすことはなかったが、現場で“ひやり”としたり“はっ”としたりした経験を有する事象。放置しておくとインシデント・アクシデントにつながるもの。
    (2)インシデント・・・・・ 危険行為があったが、人的損傷または物的損傷には至らなかった事象。
    (3)アクシデント・・・・・ 人的または物的に何らかの損傷が発生した事象。過失の有無は関係ない。
    (4)本院・・・・・・・・・・・ 佐々木病院
    (5)職員・・・・・・・・・・・ 本院に勤務する医師、看護師、薬剤師、検査技師、事務職員等あらゆる職種を含む。

    (6)医療安全管理者・

    本院において、医療安全管理に必要な知識及び技能を有する職員であって、本院全体の医療安全管理を中心に担当する者。

     
  4. 医療安全管理体制の整備
    以下の通り、病院内における医療安全管理体制の整備を行う。
    (1) 安全管理委員会の設置
      院長は、医療安全管理に関する各部門等からの意見を取りまとめ、医療安全対策についての検討をするための安全管理委員会(以下「委員会」という。)を設置する。
      @ 委員会は医師、看護師、医療技術職員及び事務職員の中からそれぞれ所属ごとに指名された者によって構成する。
      A 委員会の委員長は、院長とする。
      B 委員会の主な協議事項は、以下の通りとする。
        安全管理委員会の開催および運営。
        医療に係る安全確保を目的とした報告で得られた事例の発生原因、再発防止策の検討および職員への周知。
        院内の医療事故防止活動および医療安全に関する職員研修の企画立案。
        その他医療安全の確保に関する事項。
      C 委員会の開催は原則として月1回とする。ただし、必要に応じ、臨時の委員会を開催することができる。
           
    (2) 医療安全管理者の配置
      @ 医療安全管理に関わる取り組みを推進する医療安全管理者を配置する。
      A 医療安全管理者は所定の講習を受けた者とする。
      B 医療安全管理者は医療安全に関する取り組みのリーダーとして職員を指導するとともに、自らも積極的に研修に参加し、研鑽する。
      C 医療安全管理者の主な業務は、以下のとおりとする。
        各職場における医療事故の原因分析ならびに再発防止策の検討
        職員に対する医療安全対策に関する事項の周知徹底、その他委員会との連絡調整
        職員に対するヒヤリハット事例の積極的な報告促進
        その他医療安全管理の推進に関する業務

     
  5. 報告等にもとづく医療に関わる安全確保を目的とした改善方策
    (1) 報告とその目的
     

    この報告は医療安全を確保するためのシステムの改善や教育・研修の資料とすることのみを目的としており、報告によって何ら不利益を受けることのないことを確認する。 具体的には、@本院内における医療事故や、危うく事故になりかけた事例等を検討し、医療の改善に資する事故予防対策、再発防止対策を策定すること、Aこれらの対策の実施状況や効果の評価、点検等に活用しうる情報を院内全体から収集することを目的とする。これらの目的を達成するため、全ての職員は次項以下の定める要領に従い、医療事故の報告を行うものとする。

    (2) 報告すべき事項
      全ての職員は、本院内で次のいずれかに該当する状況に遭遇した場合には、概ねそれぞれに示す期間を超えない範囲で速やかに報告するものとする。
      @

    医療事故
    医療側の過失の有無を問わず、患者に望ましくない事象が生じた場合発生後速やかに各所属長を経て安全管理委員会及び院長へと報告する。

      A

    医療事故には至らなかったが、発見、対応等が遅ければ患者に有害な影響を与えたと考えられる事例
    速やかに各所属長または安全管理委員会へ報告する。

      B

    その他、日常診療の中で危険と思われる状況
    適宜、各所属長または安全管理委員会へ報告する。

    (3) 報告の方法
      @ 前項の報告は、原則として別に定める報告書式の書面をもって行う。ただし、緊急を要する場合は口頭にて報告し、患者の救命借置等に支障が及ばない範囲で、遅滞なく書面による報告を行う。
      A 報告は、診療録、看護記録、自らが患者の医療に関して作成すべき記録、帳簿類に基づき作成する。
      B 自発的報告がなされるよう各所属長は報告者名を省略して報告できる。
      C 報告書式は、ヒヤリハット用紙、インシデント・アクシデント用紙のいずれかとする。
    (4) 報告内容の検討
      @

    改善策の策定
    委員会は、前項の定めに基づいて報告された事例を検討し、再発防止および類似事故予防の観点から本院の組織としての改善に必要な防止策を作成するものとする。

      A

    改善策評価期間
    6ヶ月に1度各科、部門ごとに行う。

      B

    改善策の実施状況の評価
    委員会は、すでに策定した改善策が、各部門において確実に実施され、かつ安全対策として有効に機能しているかを常に点検、評価し、必要に応じて見直しを図るものとする。

    (5) その他
      @ 院長、委員会の委員は、報告された事例について職務上知り得た内容を、正当な理由なく他の第三者に告げてはならない。
      A 本項の定めにしたがって報告を行った職員に対しては、これを理由として不利益な取り扱いを行ってはならない。

  6. 事例の報告及び分析ならびに活用
    (1)

    報告

      @ 院長は、医療安全管理に資するよう、事例の報告を促進するための体制を整備する。
      A

    事例については、当該事例を体験した職員が、その概要を文書に記載し安全管理委員会に報告する。

      B

    各部署の安全管理委員は、事例から当該職員及び関係部署に潜むシステム自体のエラー発生要因を把握し、リスクの重大性、リスクの予測の可否、システム改善の必要性等に関する事項を委員会用の報告書に入力し、委員会に提出する。

      C

    事例の報告を行った者に対し、当該報告を理由に不利益処分を行ってはならない。

      D

    事例の報告は6ヶ月保管する。

    (2)

    分析
    各所属において事例について効果的な分析を行い、医療安全管理に資することができるようにし、委員会へ報告する。

    (3)

    情報の共有と活用
    委員会へ報告されたものは、委員会を通じ職員への周知徹底を図る。また、分析結果に基づき、マニュアルの改訂等の必要な改善策を立案し、安全対策に反映させる。
    報告事項をまとめたものは、院内 Web にて、すべてのスタッフが閲覧できるようにする。


  7. 安全管理のためのマニュアルの整備
    (1)

    安全管理マニュアル
    安全管理のため、本院において以下のマニュアルを整備する。

      @ 医療事故発生時の対応マニュアル
      A 輸血管理マニュアル
      B 感染予防マニュアル
      C 医療機器管理マニュアル
      D 医薬品管理マニュアル
    (2) 上記のマニュアルの作成と見直し
      @ 上記のマニュアルは、関係部署の共通のものとして整備する。
      A マニュアルは、関係職員に周知し、また、必要に応じて見直す。
      B マニュアルは、作成、改変の都度、安全管理委員会に報告する。
    (3) 安全管理マニュアル作成の基本的な考え方
      @ 安全管理マニュアルの作成は、多くの職員がその作成、検討に関わることを通じて、職場全体に日常診療における危険予知、患者の安全に対する認識、事故を未然に防ぐ意識などを高め、広めるという効果が期待される。全ての職員はこの趣旨をよく理解し、安全管理マニュアルの作成に積極的に参加しなくてはならない。
      A 安全管理マニュアルの作成、その他、医療の安全、患者の安全確保に関する議論においては、全ての職員はその職種、資格、職位の上下に関わらず対等な立場で議論し、相互の意見を尊重しなくてはならない。

  8. 医療安全管理のための研修
    (1) 医療安全管理のための研修の実施
      @ 委員会は、予め作成した研修計画に従い、概ね6ヶ月に1回、全職員を対象にした医療安全管理のための研修を定期的に実施する。
      A 研修は、医療安全管理の基本的な考え方、事故防止の具体的な手法等を全職員に周知徹底することを通じて、職員個々の安全意識の向上を図るとともに、本院全体の医療安全を向上させることを目的とする。
      B 職員は、研修を受講するよう努めなければならない。
      C 本院内で重大な事故が発生した後など、必要があると認めるときには、臨時に研修を行うものとする。
      D 委員会は、研修を実施したときは、その旨を記録し、2年間保管する。
    (2)

    医療安全管理のための研修の実施方法
    医療安全管理のための研修は、院内での報告会、事例分析、外部講師による講義、外部の講習会、研修会の伝達報告会などの方法によって行う。


  9. 医療安全管理のための人員の活用及び継続的教育

    (1)

     

    リスクを考慮した人員の配置
    医療安全を確保するため、業務の質及び量並びに職員の資質及び能力に応じて人員の体制整備を進め、リスクの高い部署、リスクの高い時間帯、職員の能力等を把握し、必要な人員配置に努める。

    (2)

    職員の健康管理
    職員が健康を保持しつつ業務に当たることができるよう、適切な職場環境の整備を行う。

    (3)

    職員に対する継続教育
    医療安全管理に関する知識及び技能及び維持向上を図るため、職員教育プログラムの充実に取り組む。

      @ 職員全体の医療安全管理に対する意識の向上
      A 職種、部門、職位にふさわしい医療安全能力の習得

  10. 業務の標準化等の推進及び継続的な業務改善
    医療安全確保のため、以下の項目の推進を図り、計画・実施・評価という一連の過程を通じた継続的な業務改善を行うことで、誤りがあっても患者への障害に至らない仕組み、及び誤りが起こりにくい仕組みを構築する。
    (1) 業務の標準化(クリティカルパス、EBMの実践等)
    (2) 業務の統一化(作業手順、採用物品の保管・配置等)
    (3) 業務の規則化(各部門の役割と責任の明確化等)
    (4) 正確で効率的な情報管理
    (5) 事故事例等の情報を活用した医療安全管理

  11. 医薬品及び医療用具の安全管理
    医薬品(血液を含む)及び医療用具について、採用から保管、使用に至る全過程を医療安全の視点から見直し、管理体制の改善、取り扱い情報の周知・徹底等、医療安全に有効な体制の整備に努める。

  12. 信頼の確保のための取り組み
    医療の信頼を確保するため、以下の項目に従って、患者が主体的に医療に参加できる環境を整える。
    (1) インフォームドコンセントの徹底
      @ 患者が自ら治療方法等を選択できるようにするため、医療従事者は、患者が理解し納得できるまでわかりやすく説明し、その説明内容を診療録、看護記録等に記載する。
      A 医療を提供する際には、その内容を日々の診療の場で患者に説明するとともに、想定しない結果が生じた場合は、患者に対して速やかに充分な説明を行う。
      B インシデント・アクシデント事例に関しては、起こった事象、経緯、説明に至るまで、カルテ及び看護記録に記載する。
      C 当指針は当院ホームページにて公開し、患者およびその家族の要望があれば、いつでも閲覧可能とする。
    (2)

    相談窓口の設置
    病院において、病院内での患者の苦情について速やかに対応するとともに、患者の病院への意見及び期待を聞き、それを運営の改善に積極的に活用していくための相談窓口を設置する。 本院におけるすべての相談窓口はMSWとする。MSWは、必要に応じて医療事故相談窓口に相談を依頼する。医療事故相談窓口は医療安全管理者とする。


  13. 事故発生時の対応
    (1)

    救命借置の最優先
    医療側の過失によるか否かを問わず、患者に望ましくない事象が生じた場合には、可能な限り院内の総力を結集して、患者の救命と被害の拡大防止に全力を尽くす。
    また、院内のみでの対応が不可能と判断された場合には、遅滞なく他の医療機関の応援を求め、必要なあらゆる情報、資材、人材を提供する。

    (2) 医療安全管理者および院長への報告など
      @ 前項の目的を達成するため、事故の状況、患者の現在の状態等を各所属長を通じて迅速かつ正確に報告する。
      A 院長は、必要に応じて委員長に委員会を緊急招集、開催させ、対応を検討させることができる。
      B 報告を行った職員は、その事実及び報告の内容を、診療録、看護記録等、自らが患者の医療に関して作成すべき記録、帳簿等に記録する。
    (3) 患者、家族、遺族への説明
      @

    事故発生後、救命借置の遂行に支障をきたさない限り可及的速やかに、事故の状況、現在実施している回復借置、その見通し等について、患者、家族等に誠意をもって説明する。
    患者が事故によって死亡に至った場合は、その客観的状況を速やかに遺族に説明する。

      A 説明を行った職員は、その事実及び説明の内容を記録し、看護記録等に自らが患者に関して作成すべき記録として記載する。

  14. 当指針の見直し
    当指針は、年 1 回または必要時、適宜見直すものとする。

2004年2月作成
2007年10月以下改訂および追加
5 −( 4 )−A、6−(4)
7−(1)、12−(2)
2008年3月以下追加
12 −( 1 )−C
2008年9月改訂
2009年9月改定