脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)の患者数は現在約150万人といわれ、毎年50万人以上が新たに発症していると推測されています。 (図@参照)脳卒中は、がん、心臓病に次いで日本における死因の第3位となっています。また「寝たきりになる原因」の3割近くが脳卒中などの脳血管疾患です。 今後、日本は高齢者の激増や、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病の増加により、脳卒中の患者数は2020年には300万人を超すことが予想されています。
  この脳卒中のなかで、脳出血は近年減少してきましたが、食生活の欧米化などに伴う動脈硬化や代謝異常の増加により脳梗塞の患者数は増加してきています。 このため、何より重要なことは、脳梗塞にならないように予防することです。後述の点に注意し健康な生活を遅れるようにしましょう。

 
脳梗塞を防ぐには

  1. 塩辛い食品は控え、味噌汁もうす味にする。
    また、麺類のスープは全部飲まないようにする。
  2. 間食や偏食を避け、栄養バランスのとれた食事をする。
    牛肉や豚肉などは控え、魚や野菜を多く食べる。
  3. 禁煙を実行しアルコールを控える。(日本酒なら1日1合、ビールなら中ビン1本まで)
  4. 十分な水分(1日に1000mlぐらい)は十分にとる。
    (利尿作用がある紅茶・コーヒーはとり過ぎないようにする)
  5. 規則正しい排便を心掛ける。
  6. 熱い風呂に長く入るのは避ける。(適温は40℃程度)
  7. 毎日軽い運動をする。(1回30分〜1時間の運動を、毎日または1日おきに)
  8. 十分な休養と睡眠をとる。

  特に注意したいことは、こまめに水分を補給することです。からだが脱水傾向になると、血液は濃縮されてドロドロになり、固まりやすくなってしまいます。 つまり、脳血栓による脳梗塞が起きやすくなってしまうのです。脳梗塞は高齢者に多い病気ですが、高齢者はからだの水分が少なくなっても喉の渇きをあまり感じないことがあります。 そのため例えば夜寝る前や、夜中トイレに起きたときなどには、コップに3分の1から半分程度の水を飲むと良いでしょう。

 
脳梗塞の前ぶれについて

  脳梗塞を発症する前には、一時的に、手足の脱力やしびれなどの症状が出現することが良くあります。大半は、数分で症状は消えてしまいますが、 このような症状は、脳梗塞の「前ぶれ」が考えられますので、すぐに医療機関に受診してください。

 

主な前ぶれ症状(図A参照)

  1. 手足に力が入らない
    「はしがもてない」、「コップを落としてしまう」など、手に持っていたものを落としてしまいます。
  2. 足がもつれる
    まひが起こるために、「フラフラしてしまい歩きにくい」などの症状がでます。
  3. 片方の手足がしびれる
    体の片側に、「感覚が鈍い」、「しびれ」などの症状がでます。
  4. 視力障害
    「ものが二つに見える」「見えにくい」などの症状が現れます。
  5. 言葉を話せない
    話したいが、言葉が出てこなかったり、人が言っていることが理解できなかったりします。
    また、言葉は出てくるが、ろれつが回らずに上手に話せないことがあります。
  6. 物が飲み込めない
    食べ物や飲み物がうまく飲み込めずにむせてしまうことがあります。

 
最後に

  これらの前ぶれ症状は、すべて起こるわけではありません。障害を受けた脳の部分に応じて、いずれかの症状が起きてきます。 疑われる症状が1つでも起きたときには、迷わずにお近くの医療機関に受診をして診察を受けてください。
  特に、「高血圧、糖尿病、高脂血症、心臓病」などをお持ちの方は、脳梗塞を引きおこしやすいため、前ぶれ症状に特に注意することが大切です。

 

 

  胸やけを感じている人は多いと思います。食べ過ぎやストレス等によって胸やけや口の内に酸っぱい液がこみあげてくる症状で悩んでいる人が最近増えてきています。
  一度胃のなかに入った食物が再び食道に逆流することを胃食道逆流症と呼んでいます。欧米に多い病気ですが、日本でも食事の欧米化や高齢化で最近増加しています。
  胃には自分自身の酸による損傷を受けないような仕組みが出来ていますが、食道にはこのような仕組みがありませんので、頻繁な逆流で食道が傷ついてしまいます。
  また、胃食道逆流症は胸やけ等の症状だけでなく、慢性咳、胃もたれ、胸痛、のどの違和感、声のかすれ等のさまざまな症状を起こすことで注目されています。

 
逆流の原因と症状

  以下のようなさまざまな原因が重なって胃食道逆流症は生じます。@加齢とともに、食道と胃のつなぎ目の括約筋や胃の弁構造(ヒス角)が弱くなり、逆流を防ぐ機能が低下する。(図@参照)A食道と胃の働きが低下する。 B肥満や腹部をしめつけたりすることで腹圧が上昇する。C胃液の分泌が増加する。D食べ過ぎ等々です。
代表的な症状は胸やけや呑酸(げっぷ)です。胸やけはみぞおち辺りから胸の下の方にかけて、焼けつくような不快感です。 呑酸は口の中まで酸っぱい液がこみあげてくる症状です。
  その他、逆流によってさまざまな症状を引き起こすことで、注目されています。(図A参照)胃もたれ、狭心症に似たような胸痛、慢性咳、気管支喘息様症状等の呼吸器症状、のどの違和感、声がれ、 耳痛等の耳鼻咽喉科領域の症状等と関連していることがあります。原因のわからない頑固な咳を苦しんでおられた方が、検査でこの病気とわかり、治療ですっかり症状がとれたり、 原因不明の腹痛で苦しんでいた方がこの病気とわかったりすることがあります。



 
診療と治療は

  一般的には、胃バリウム検査と内視鏡検査等で診断します。内視鏡検査で、食道のただれが目立たなくても、症状が強い人がいます。
  症状を和らげる対症療法が主体です。以前はあまり効果のある薬がなくて、治療が難渋する事が多かったのですが、強力な胃酸分泌抑制剤が開発されて、症状をコントロールすることが容易になってきました。 その他制酸剤や消化管運動機能改善剤等が使用されています。又、逆流そのものを抑える、内視鏡治療法や外科的手術法もあります。

 
日常生活で気をつけること

  日常生活を改善するだけで、症状がよくなる事がありますので、次の点に注意しましょう。

@ 食べ過ぎないこと。食後すぐに横にならないようにしましょう。食後すぐに横になると、胃液が逆流しやすくなりますので、 食後 1 〜 2 時間は横にならないようにしましょう。横向きで寝る場合、右を下に寝ることをおすすめします。
A 夕食の量は少なめにして、上体を少し高くすると効果的と言われています。
B タバコ、アルコール、柑橘系の果実や果汁、炭酸飲料、脂肪の多い食物等は、 胃酸の分泌を高めたり、胃内の食物の停滞時間を長くするので、控え目にしましょう。
C 肥満や、前屈み姿勢、ベルトの締め過ぎ、等は腹圧を上げますので、注意しましょう。
 

 
 

   ある日突然患者さんが亡くなったという連絡がご家族からありました。
   今まで平穏に生活し、仕事も順調にいっていたところ、朝5時頃、急に胸が苦しいと訴え、その後救急車で病院に運ばれましたが、1時間後に亡くなったといいます。65歳でした。
   2週間前から、毎朝5〜6時頃に、胸の圧迫感があったといいますが、10分位で自然に治っていたこともあり、仕事が忙しく、すぐ治まるので医者にはかからなかったといいます。病名は『急性心筋梗塞』でした。
急死する病気の中で、最も多いものです。
   この例のように、突然心臓が止まって、死に至る『心筋梗塞』について、注意を喚起したいと思います。

 
1.日本人がどのような病気で死亡するのか?

   100人の内30人は「ガン」。「脳血管疾患※1」(脳出血・脳梗塞など)が15人。そして「心筋梗塞※2」(虚血性心疾患)15人となっています。
   これらはある程度予防できるものです。特に※1、2は血管の障害によるもので、動脈硬化と密接な関係があるからです。

2.心臓とは

   心臓はポンプの役割があり、全身くまなく血液(動脈―酸素や栄養素が含まれている)を送っています。
   同時に心臓自体(心筋)にも酸素・栄養を送っています。心臓は1日10万回収縮・拡張を繰り返し、水道管やガス管のような血管で血液が送られています。この血管(水道管・ガス管)がきれいで十分送られている状態が正常な状態です。
   水道管・ガス管が古くなってしまって詰まってしまったり、脆くなるとどうなるでしょうか?血液も血管をうまく流れなくなります。

3.心筋梗塞とは

   脳の血管が詰まるのが脳梗塞です。
   心臓自体に栄養を送る「冠動脈」という血管があります。これに血液の固まりが詰まったり、血管が急に「ケイレン」して流れなくなるのが「心筋梗塞」です。
   酸素や栄養が行かなくなると、その先の心筋は腐ってしまいます(壊死)。腐り方によりますが、「太い冠動脈」がつまると心臓の大きな部分が働くことが出来なくなります。すなわち「死」です。腐る部分が少なければ命が助かることもありますが、どの部分が詰まるかにより寿命が決まります。

 
4.自覚症状は?

   とくに前駆症状(前触れの症状)について、筋梗塞になった時の約半数は前触れの症状が無く、死亡の時などは詳しくは捉えにくいのですが、しかし生存者では階段や坂道で胸が苦しくなったり、圧迫感があったといいます。
   休んだりすると良くなってしまうので、放置してしまいがちですが。冒頭の患者さんの様に前から、とくに最近になって感じた時が大事で、この段階で医師の診察を受けていれば助かった可能性があり残念です。
   多くの心筋梗塞の患者自身がまさか心臓をやられているとは思っていないのです。昔は60歳以上の発病が多かったですが、最近は40〜50歳台の働き盛りの人が増えてきています。
   私の経験した最も若い人は29歳でした。一方最近は長寿社会となり、70歳以上の方も増えています。

 
5.心筋梗塞にならないために

  健康診断を年一回以上必ず受診し、血圧、血液検査、心電図、胸部XPに異常の有無をみましょう。とくに(イ)血圧値、(ロ)採血を受け、糖尿病や痛風、脂質異常の有無(悪玉や善玉コレステロール)、中性脂肪などのチェックをします。(ハ)心電図は必ず受けましょう。
   とくに何らかの心臓の症状がある時は運動負荷心電図検査を必ずやることです。

 
6.最後に

   予防をまとめると@高血圧は放置せずA糖尿病は必ず治療B煙草は絶対喫わない意志を持ちC悪玉コレステロールは減らし善玉を増やすD運動(歩くこと)1日1万歩を目標とし(週3〜4回以上)Eストレスをためない(現代はストレスが万病の元といわれる)。とにかく前胸部(心臓)、いつもと違う症状を感じたらすぐに医療機関に行きましょう。

 

 


この記事が皆さんの目に触れるまでには、マスコミが新型インフル対策を繰り返し報道し、備蓄食糧・薬剤などの準備が進んでいることを切に願う。ここでは、 2009 豚由来の新型 H1N1 インフルエンザを「新型インフル」、例年冬期に流行する季節型のインフルエンザを「従来型インフル」と呼ぶ。まず最近の患者数増加の図1のグラフをみていただこう(厚労省発表資料)。


新型インフルの流行は収まるどころか、むしろ増加の一途である。従来型インフルは、夏場はほとんど発生しないので、この患者数の増加は新型インフルによるものである。この先どうなるか?秋から冬にかけ、従来型が新型とダブって流行する。日本全国で流行し、「いつでも、どこでも、誰でもかかる」のである。対策のポイントは、「いかに重症化するのを防ぐか」と「重症化した人を助けるか」である。


患者になった場合の行動計画〜治療を受ける心構え〜
6月には この線に沿って厚生労働省の方針変更があった。「こういう人が 重症に なりやすいですよ」と注意喚起し、重症化した人がひとりでも多く助かるために、医療機関のマンパワーを有効に活用する方策を打ち出した。(図2 ・厚労省ホームページから )
重症化するとは、多くはインフルエンザで体力を消耗したところに肺炎を合併し呼吸状態が悪くなることと同義である。たとえば、一度に感染が広がり 100 人が同時に肺炎になり、一度に病院に押しかけたら、病院にある人工呼吸器の数には限りがあるのでとても治療できない。 一方、 10 人ずつ 10 日間に分散すれば人工呼吸器が使える可能性が出てくる。また、医療機関のマンパワーを有効活用するためには、比較的元気な人は家で治療して欲しい。熱が出たら必ず病院へ行かなければいけないか?そんなことはない。熱があっても、食べること、水分をとることができれば、常備薬の助けを借りながらほとんどの人は自分の力で回復する。新型インフルは発熱が主症状だが、胃腸症状を起こすことも多い。準備すべき薬剤は、解熱薬としてアセトアミノフェン(薬局で尋ねれば購入可能)、整腸薬としてビオフェルミン。ただし、表にあてはまる重症化しやすい人は、早めに医療機関を受診し、抗ウイルス薬を使う。嘔吐・下痢対策としてスポーツドリンク(そのままでは薄いので、 500ml あたり塩をひとつまみ加える)、あるいは OS-1 という経口補水液を用意しておき、スプーンで少しずつなめる。口から点滴するイメージ。 OS-1 にはゼリー状のものもある。むせる人には有効。ただし、症状が強くなってくるようなら受診してほしい。


介護する立場になったときの行動計画
介護する人が、重症化しやすい人(図2)にあてはまる場合、医療機関を受診し、予防的に抗ウイルス剤を用いることを検討してもらおう。
患者になっても、介護者になっても、うつさぬよう、うつらぬよう、マスクをかけ、手をよく洗うことが重要。新型も従来型も石けんでよく洗えば退治することができる。


ワクチンについて
7月から新型インフルのワクチンの生産が始まったが、秋までには全員分はとても間に合わない。はじめはライフライン維持に必要な人たち、重症化しやすい人、への優先接種となるだろう。従来型のワクチンも早めにうっておこう。どちらにかかるかわからない。もう一つ、「重症化とは肺炎になること」、と前半で述べたが、肺炎の50%は、肺炎球菌が原因である。自費で8000円かかる、一生に一回しか打てない、有効期間が5年から10年程度である、という制約はあるが、肺炎球菌ワクチンの接種は救命には有用である。かかりつけの医師と相談してみるといいだろう。


診療所の対策は?
流行を広げないために、診療所、病院では新型インフルの患者さんが他の人に接触しないよう、待合室を別にしたり、診察時間帯を分けるなどの工夫をする。いきなり行かず、必ず電話してから来院してほしい。


最後に
チベットのダライラマは、良い人生とは?という問いに対し、良い睡眠と良い食事、と簡明に答えられたという。新型インフルに対する究極の予防法も全く同じ。節制を旨とし、バランスの良い食事をとり、早寝をして過ごそう。








 



今年1月、5年ぶりに「高血圧の治療ガイドライン」が改定され、「家庭血圧」の降圧目標値、糖尿病などへの薬の一部見直しがなされた。食事・運動の大切さのほか、血圧は低いほうが血管への負荷が少なく、脳梗塞、脳出血、心筋梗塞、心肥大、脳動脈瘤破裂、大動脈瘤破裂、腎臓病、眼底出血などの予防になるため、「家庭血圧」の目標値をより下げることになった。
「診察室血圧」、家庭血圧の目標値はそれぞれ若年者・中年者で130/85、125/80、高齢者は140/90、135/85に改められ、「家庭血圧」の目標値がさらに重視されたことになる。



家庭血圧の測定法

家庭血圧の測定法、注意点として高血圧薬を服用する患者さんは、上腕に巻いて測るタイプの血圧計を使用し、朝夕の血圧を記録して医師に見せ、その後の記録、測る時間帯、回数について相談すると良い。血圧計の値段は数千円のものでも十分である。薬局、電気量販店などで売っている。指で測るタイプは変動幅が激しくて、患者さんに向いていないので注意を要する。
朝の血圧測定の注意点は、起床後1時間以内・排尿後・服薬前・朝食前・座位1ないし2分安静後に1回以上(1ないし3回)測定、各々記録し、医師に見せてから測る回数を決めると良い。夕の血圧測定は就寝前が推奨されているが、飲酒後・入浴後は血圧が下がるので、帰宅後安静時間が十分取れていれば、夕食前・飲酒前・入浴前を選んでも良い。


はげしい血圧の動き
血圧の変動は一日を通じても朝・昼・夜、時々刻々と変わり、3回連続測定しても変動するものであり、その変動が激しい方は医師に相談することが大切である。診察室ではいつも高く、家では正常の「白衣高血圧」(治療不要)、それとは逆で、医師の前では正常血圧、家では高血圧の「仮面高血圧」(治療要)の存在が知られている。
日常活動の中での血圧の変化は、心臓の収縮期血圧(高い方の血圧)で+70から−30、心臓の拡張期血圧(低い方の血圧)で+50唐−20まで変動した研究報告がある。特に、排便・排尿・ベッドからの起立時の血圧変動は激しいことがある。朝方にベッドから起立して血圧30も下がるとめまいの原因となるが、その逆に70も上の血圧が上がる時もあり、それもめまいの原因となるので、めまいが起きたときは血圧を測り、同時に脈の数を記録し、医師に相談すれば適切な対応、薬の処方変更など検討してくれる。

季節に応じての変動も
血圧は1年を通じても変動する。夏の暑さは血圧を低くし、冬の寒さは血圧を上げる。その血圧の変動幅は人によって相当に異なり、これから本格的な夏に向けて低血圧になる方もいるので、血圧を記録して、薬の加減について医師に相談すると良い。高齢者は夏に水分不足になると血圧も下がり、血液が濃縮して脳梗塞になりやすくなるので注意が必要である。血圧の下がりすぎを発見するためにも家庭血圧の測定は欠かせない。







 

糖尿病とは?
糖尿病は文字通り「糖が尿に出る」病気です。では、なぜ糖が尿に出るのでしょうか。糖分は、人間が生きていく上で必要なエネルギー(ガソリン)です。ガソリンは燃焼しないと自動車は動きません。それと同じように、糖分を燃やしエネルギーに変える時に必要なのが、膵臓から出る「インスリン」というホルモンです。インスリンの出が悪い、効きが悪い場合、身体の糖分が使われず、たくさん溜まった状態が糖尿病です。
なぜインスリンの出が悪かったり効きが悪くなるのでしょうか。多くは、遺伝(血縁者が糖尿病)のため、インスリンの量が元から少ない場合や、肥満(身体に脂肪が多い)や精神的、肉体的ストレスがある場合(風邪や大きな病気、心配事など)インスリンの効きが悪くなります。
恐ろしいのは、始めは自覚症状がほとんどない点です。健康診断で特に症状がないからと、今まで血糖が高く、尿糖が陽性でも放置していて医療機関を受診した場合、合併症が既にある方が多く見られます。

糖尿病の三大合併症
糖尿病の三大合併症は、「網膜症」「腎症」「神経症」です。その他、血管が詰まり易くなるので「脳梗塞」「心筋梗塞」免疫力が落ちるので「癌」「肺炎」「腎盂腎炎」等の「感染症」に罹り易いと言われています。目が見えなくなり初めて糖尿病と診断されたり(網膜症末期)尿が出なくなり腎臓から老廃物を出せず、透析機械を使って老廃物を取り除かなければならなくなったり(透析は、老廃物を身体から取り除くのに通常、週三、四日間三、四時間かかります。) ( 腎症末期 ) 足に怪我をしても痛みを感じず放置し、足が腐って切断しなければならなくなった患者さんもいます。(神経症末期)この様に糖尿病は放置するととても恐ろしい病気であり、合併症が出るのには、何年もかかる事があるので早期発見早期治療が重要です。

食事・運動療法がカギ
糖尿病の治療は、自分のインスリンの出具合にあった食事療法、運動療法(一日 30 分位歩く。)それに薬を併用する場合もあります。重要なのは、食事療法、運動療法ですが、これは、患者さんが、自己管理をしていただかないとどうしようもありません。「薬で何とかしてください。」とおっしゃる方がいますが、食事療法、運動療法が守られない方に薬を処方しても結局、薬の量も限界となり、これ以上は改善しない状態になってしまいます。逆に、薬を飲まなくてもかなりの方が、食事療法、運動療法でよくなります。確かに自己管理はとても難しいですが、まずは、何かできる事を一つ始めてください。(腹八分目で食事をやめる。間食をやめる。少し遠回りをして買い物に行くなど)
よく「甘い物はどうですか。」と聞かれますが、前半に書いたように、身体の中は、糖分だらけでその糖分を処理し切れないのが糖尿病なので、そこに甘い物が入ると、インスリンをもっと膵臓から出さなければならず、早く膵臓が疲れて増々インスリンは出にくくなり、糖分が増えて、合併症が進んでしまいます。

血糖コントロールの目安
治療の目安は、外来通院では、主に血糖とヘモグロビンエーワンシ (HbA1c)( 一、二か月間の血糖の平均 ) 尿糖、尿蛋白 ( 腎症の早期発見、経過観察 ) などを見ます。血糖コントロールの目安は、朝食前の血糖 110mg / dl 未満、 HbA1c は、 5.8 %未満です。よく朝食前は、血糖が低いけれど、食後の血糖は高いので採血するのを嫌がる患者さんがいらっしゃいますが、糖尿病の方の食後二時間血糖も 104mg / dl 未満が目標です。いかに、健常人の血糖に近づけるかによって、合併症の出現頻度がかなり違います。

眼科の定期健診を
また合併症についてお願いがあります。それは「眼科の定期受診」です。糖尿病と言われ、一度は「糖尿病性網膜症の有無」について眼科に受診してもらいますが、たいていの方はそれっきり受診されません。糖尿病と診断されたら「糖尿病性網膜症」になる危険性は常にあるので必ず定期受診して下さい。
どうぞ糖尿病を甘く見ないで下さい。糖尿病は「万病の素」です。
最後に糖尿病は一度診断されると残念ながら治りません。しかし、血糖を正常域に近づけるよう医療機関に通院しながら、自己管理をすれば天寿を全うできる病気です。

血糖コントロール指標と評価
指標 不可
不十分 不良
HbA1c(%) 5.8未満 5.8-6.5未満 6.5-7.0未満 7.0-8.0未満 8.0以上
空腹時血糖( mg/dl ) 80 -110 未満 110-130未満 130-160未満 160以上
食後2時間血糖(mg/dl) 80-140未満 140-180未満 180-220未満 220以上

参考文献:日本糖尿病学会編 2008 -2009 糖尿病治療ガイド

 

 


 
  動脈硬化とは、動脈の血管壁にコレステロール等の脂質が沈着し血管の細胞が増殖して、血管が弾力を失い硬化するとともに内腔が狭くなる状態を言います。
  PWVは、心臓から出た拍動が全身に広がる時の速さを測定し、動脈硬化の程度をその速さから客観的に表すものです。(値の大きさと動脈硬化は比例します)
  戸塚病院ではこの機械を2004年4月に購入しました。そしてこの機械を使い検査した30代〜90代の約230例について動脈硬化が進むと言われている糖尿病、高血圧症、高脂血症、その他(疾病なし)に分類して、動脈硬化と疾病の関係が文献等で言われている内容と一致しているか比較検討しました。
  次がその結果です、糖尿病43%、高血圧症38%、高脂血症34%、その他18%でした。以上のことから動脈硬化を促進させると言われる糖尿病、高血圧症、高脂血症の人たちが、疾病のない人たちよりはるかに高率であったことがわかりました。また疾病があっても半数以上の人は年齢相応の変化を示しましたが、リスクの高いグループとして継続的に経過を観察する必要があると思います。
最後に、疾病のないグループでも、約20%の人たちが年齢以上だったことを考えるとほかの動脈硬化を促進させる因子、喫煙や肥満なども考えて、疾病がなくても健康診断的に血圧脈波検査をしてもいいのではないでしょうか。診察時医師にご相談ください。
 
 
ご不明な点がございましたら下記までお問い合わせ下さい
生協戸塚病院 045-864-1241(代表)